ネットのモグラ

日陰でいろいろつぶやくブログです。自分の創作資料置き場も兼ねてます。

市街戦の要領③

今度の元ネタはこれまでよりも年代が新しい本です。著者はイギリス特殊部隊SASの元隊員ですので、凄く実戦的です。

 

・現代のエリート部隊は広々としたところで敵と遭遇しても、あえて都市部に誘導することが多い。装備に乏しい側から見ると、市街地には多くの利点がある。

 

・市街地の環境は、とりわけ地上部隊にとって視界を遮るものが多い。これらの遮蔽物は小火器から身を守る盾にもなる。

 

・遮蔽物の表面が堅いため、跳弾によって戦闘員だけでなく一般人にも危害が及びやすい。また、建物が崩落する危険もある。

 

・車を盾にする場合、多くの箇所は弾丸が貫通してしまうが、エンジン部分は貫通しない。しかし、車にぴったりくっつくと、ボンネットや屋根に跳ね返る弾に当たりやすいため、車から数歩ほど離れたうえで盾としたほうが良い場合もある。

 

・重火器は市街地の遮蔽物を破壊するが、弾道上のあらゆるものを破壊して破片をまき散らし、射程域の人間を危険にさらすため、使用には注意を要する。

 

・市街地で火器を撃つことでもたらされる危険性を軽視してはならない。民家や病院、宗教的な場所などを攻撃してはならない。こうした行為は敵の宣伝に利用される。

 

・市街戦はスリーブロック戦争を強いられる。市街地では自分たちを狙う敵と交戦しつつ、電線を修理する工兵を警護し、物資が盗まれないように監視し、診療所を開くなどして、地元住民の理解をとりつけるようにする。これら全てがスリーブロック(三街区)内で起きるのが、市街戦の本質。

 

・市街地で行われる戦闘は、主にパトロールと建物内の掃討。

 

・市街地で車両を使用すると、建物に囲まれ、道の上でしか移動できないことから、待ち伏せ攻撃に最適だ。さらに、敵が車両を攻撃するときは、逃げないように後方などをブロックするため、こうした場合は排除しなければならない。

・パトロール隊が攻撃を受けた時、そこが自由に射撃できる場所であるならば、車両の重火器を用いることができる。しかし、巻き添え被害を防止しなけらばならない場合は、歩兵が攻撃するしかない。チーム同士が交互に射撃と移動を繰り返すのだ。

(注 この戦術はファイアー&ムーブメントを指すと思われる

 

北アイルランドのイギリス兵は、パトロール隊が立ち止まったら必ず近くの遮蔽物に避難するという原則がある。

 

・市街地の部屋は射撃の拠点になり得るが、手榴弾の攻撃に弱いという特徴がある。もし破片手榴弾を投げ込まれたとき、頑丈な壁に囲まれていれば助かる見込みはない。

 

・建物内の掃討は、まず突入地点に手榴弾を投げ込んだ後、すぐさま建物内に飛び込む。一部屋ずつ攻略していき、戦闘員と非戦闘員の区別を瞬時に行って圧倒的な火力で制圧する。建物内の掃討で気をつけることは、弾薬の再装填のタイミングを戦術に組み込むことと、弾丸が壁を突き破ることだ。建物内は罠や同士討ちの危険もある。

・建物内は三次元戦闘空間であり、背後からの攻撃はもちろん、吹き抜けから手榴弾が落とされたり、天井の穴から狙い撃ちされたりする。

・上階に上がるのは非常に危険なため、上階の敵は外部からの狙撃で全滅させるか、一階を占領して脱出口を無くしてから降伏させる。

 

 

元ネタ クリス・マクナブ「最新コンバット・バイブル―現代戦闘技術のすべて」 

市街戦の要領①に比べるとイラストや写真は少ないですが、部屋で射撃する姿勢などは参考になります。(長時間射撃姿勢を維持するため、普通に椅子に腰掛けて、窓の外へ銃を向けるなど、楽な姿勢を保つイラストなど)

 

 

市街戦の要領②

今度は陸自の人の論文から。ただ、1980年の論文のため、今とは大きく異なる部分もあると思います。

これもあとで統合したいと思います。

 

我が国の都市の特徴

三大都市圏(東京・名古屋・大阪)は国土の10%を占めるが、そこには人口の45%が住んでおり、産業の集積率も高い。

・水道は国民の90%が利用し、都市ガス・プロパンガスは家庭用燃料の30%が利用している(1977年時点)

・都市の分布と地形区画は、都市は平地部に存在し、都市圏の広がりは山地等によって区画されている地域とおおむね一致。都市は当該平地の政治・経済・文教・交通等の中心

・ヨーロッパの都市に比べて建物の立体度が低く、道路、公園、広場などの空き地の割合が少ない。中高層建造物は都心や郊外住宅などに見られるが、住宅地の大部分はだいたい低層建造物で閉められ、地下構造物はきわめて少ない。我が国の都市において特異なのは電柱と横断歩道橋が存在すること。

・最近(注 1980年)では都市の不燃化が進み、コンクリオート作りの永久建築物が増加しつつあるが、木造建築の比率は依然として高い。(昭和52年の着工住宅のうち、木造は建物全体の75%)なお、1968年の三大都市圏の木造建造物率は90%

 

都市化が防衛に及ぼす影響

・都市は交通・通信・水・エネルギー等高度に自動化・機械化されたシステムの稼働が必要だが、これらのシステムはサボタージュやゲリラによる破壊活動に対して極めて脆弱。極めて小規模な破壊により混乱が増幅し、パニックを都市全体に広げ、収拾のつかない事態を招く。国家意思が市民の意思の集合である自由主義社会において、都市が有する脆弱性は戦略的な目標になりうる。

・狭い国土の平地部に人口と産業施設が集中し、それは全国的に見ると三大都市圏に偏在している。これは国力がこの地域に集中していることを意味しており、この地域の破壊と喪失は我が国にとって致命的である。しかも、これらは大陸に基地を有する航空機やミサイルの範囲内にある。

・欧米都市に比べ、木造建築の比率が高い我が国は、焼夷、破壊に対して脆弱で、空き地が少ないことも相まって被害を拡大させる。

・戦力的に価値の大きい地域を短期間に占領し、政治交渉を有利に導く、あるいは既成事実として戦争目的を達成するという場合(限定侵攻)の場合、我が国の地方都市は区画された地域の象徴的存在であり、都市の産業・交通施設等の戦略的価値を考えると、限定進行時の目標として価値は高い。

・港湾のほとんどにはその背後に港湾の規模に比例する大きさの都市を背後に有し、都市を占領しなければ港湾の使用は困難。空港は都市の郊外に位置し、空港で発着する航空機の脅威をなくすには、都市を含む一帯の占領が必要。このため、港湾や空港の争奪のため、都市の目標価値は高い。

・地上からの攻撃は道路沿いに発達している市街地や道路の集約点としての都市を通らなければならない。

・第二次大戦の日本本土決戦準備においても、当初は九州の住民は戦闘になる前に事前に疎開するよう計画されていたが、現地軍は、施設・食料・輸送等の手配を検討した結果、疎開させることが不可能だったため、疎開計画を廃止し、住民は最後まで軍とともに戦場にとどまり、弾が飛んでくれば一時戦場内で退避することにした。

軍の統制力が強い当時であっても、住民の安全確保は難しい。

 

都市化への戦略・戦術

重要なことは以下の三つ

①国家の中枢たる都市圏への攻撃を阻止

②主要都市の占領を回避

③市街戦に備える

着上陸する敵の侵攻を阻止できず、港湾・空港都市が敵手に渡れば、戦力の増強を許し、そのまま戦争終結にもつながりかねない。

これに対するには、①情報収集に努め、要点に部隊を配置することで、奇襲上陸を防ぐ。②長距離火力や敵のミサイルからの防護などによって、迅速な戦力集中を行う。

③敵が脆弱な洋上・海上のうちに敵を撃破するための火力の充実。

また、市街戦に備えるには、以下の方策が必要

①建築物の構造・高さ・屋上の状況・地下構造物等を明らかにするほか、都市の立体的な景観を表す地図(注 今なら3D等)の都市地誌を整備する。

②各種火器の市街地での有効性を検証する。近代的な兵器ほど市街戦では役に立たないと言われており、例えば対戦車兵器もヘリにでも積まない限り市街地では有効ではない(注 これは他の市街戦マニュアルとは異なるところ。時代のせいか?)

③人工物の対砲弾性の実証

市街戦では防衛側が有利といわれているが、これは占領した建物の強度によるところが大きい。したがって、主力戦車の射撃に耐えられるかどうかが陣地占領の考慮要件になる。

なお、ソ連軍の市街戦に対する考え方としては

①ヨーロッパの現状を踏まえて市街戦を重視しているものの、攻撃に際しては市街地はできるだけ迂回するべきと考えている。

②攻撃する場合は市街地への無停止攻撃か、市街地を包囲した後に攻撃するかのいずれか。

③攻撃部隊の編成としては自動車狙撃1個中隊、直接照準射撃砲兵1個中隊、1個~2個戦車小隊、戦闘工兵1個小隊、化学班、火炎放射器班等で構成

④市街地における核、化学兵器の使用を重視。

 

元ネタ 陸戦研究 1980年11月号 堀川正照「都市化の影響とその対応について」

 

 

市街戦の要領①

創作用のネタを書き出しておきます。

これらは後で他のネタが上がったら統合する予定です。

 

・市街戦では迅速に移動しなければならないことから、体中に装備をぶら下げてはいけない。弾薬袋とベルトまわりの装備だけで良い。

・建造物密集地では弾の発射音が周囲のビルに何度も反響し、訓練を積んでいる敵は窓や扉の陰で武器を構えているため、敵がどこから撃っているのかを知るのが不可能に近い。

・煙や埃がストリートをおおって混乱をさらにひどくする。敵を識別できても仲間にそれを教えるのが難しい。唯一の有効な手段は曳光弾(発光して軌跡がわかるようにした銃弾)を使い、敵の位置を味方に教えることだ。

・市街戦では野外よりも遮蔽物にめぐまれるため、攻撃する側が前進する際には狙撃兵の餌食になる。対応策としては撃ってきたと思われる窓や家の一部に対戦車兵器を打ち込むのが手っ取り早い。

・市街戦では、戦車が有効だ。手法で建物に突入口を開き、機銃で歩兵の突撃を援護し、開けた場所で降り注ぐ銃弾から歩兵を守る。だが、歩兵が道路沿いの家屋を掃討する前に戦車が先陣を着ると、たちまち対戦車兵器の餌食になるだろう。

・市街戦では、複雑な任務のため、単純で前向きな計画を立てよう。

・市街戦では、指揮官は部下に作戦の大部分を任せるようにしよう。作戦単位が小さく独立し、分隊や個人単位で戦いを進めなければならないからだ。指揮官は前線にいて、自分の担当地区を細かく分割して目標地点を指示する。

・市街戦では、建造物の掃討は1部屋残らず隅から隅までやらなければならない。

・市街戦では工兵が重要な役割を果たす。敵のトラップを除去し、がれきをブルドーザーで除去する。また、2階から速やかに侵入することも多いため、はしごやひっかけ鈎(フック)といった道具も重要。

 

元ネタ COMBAT SKILLS2 コンバットスキルズ2―戦闘マニュアル (2) 

なお、元ネタにはイラストと写真で解説されているため、かなりわかりやすいです。